ガスミュージアムブログ
東京の街~くらべる探検隊~ 第9回「銀座通り」
今回のくらべる探検隊は、明日(12月18日)、東京に初めてガス灯が灯った日にちなみ、京橋から銀座四丁目までの「銀座通り」を探訪してみたいと思います。
今から150年近く前、明治7年(1874)12月18日、金杉橋から新橋を経て京橋までの「銀座通り」に85基のガス灯が灯りました。これが東京におけるガス事業のはじまりです。
ガス灯が灯ってから10年あまりの明治の初めの頃、ガス事業は採算がとれずに苦難の日々でした。後に初代の経営者となる渋沢栄一の手腕により発展し、明治18年(1885)には民間の会社となりました。
ガス灯は煉瓦造りの街並みを明るく照らし、この文明開化の光を一目拝もうと連日多くの人が押し掛けたそうです。
さて、今回のスタート地点、京橋にあるガス灯です。隣にはかつて京橋が橋だったころの親柱もあります。
にぎやかな銀座4丁目から少しはなれ、ひっそりと建っているため、気づかず通り過ぎてしまう方も多いと思います。
こちらは、東京名所図会 銀座通り煉瓦造 歌川広重(三代)明治12年(1879)の作品です。
自動点火装置やタイマーなどが無い当時のガス灯には、決められた時間に点消作業を行う人物がいました。
一般的には点消夫と言われ、東京ガスでは「点消方(てんしょうかた)」と呼ばれました。彼らは「点消方」とわかる半纏(はんてん)を羽織り、火種のついた棒(当初は2本、後に1本)を持ち、50本から多い人は100本近くのガス街灯を受け持っていました。
煉瓦街を背景にガス灯を点けている様子が描かれ、まさに文明開化を象徴する作品ですね。
この錦絵に描かれている、点消方が点けているガス灯は、先ほどの京橋のガス灯と同じデザインのものです。
ガス灯の近くにはこんなプレートがありました。
煉瓦とガス灯(1987年記)
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明治初期我が文明開化のシンボルとして、銀座には煉瓦建築がなされ、街路照明が用いられた。床の煉瓦は、最近発掘されたものを、当時のまま「フランス積み」で再現。ガス灯の燈柱は、明治7年の実物を使用、燈具は忠実に復元。
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このガス灯の燈柱は、明治7年の実物なんですね!
では、銀座1丁目に行ってみましょう!
こちらは、「鉄道馬車往復京橋煉瓦造ヨリ竹河岸図」で、歌川広重(三代)<明治15(1882)年 木版画>の作品です。銀座1丁目付近を描いています。
煉瓦街に、ガス灯が建つ街を背景に、鉄道馬車、人力車等が描かれて当時の銀座がにぎわう様子がわかります。
銀座は明治5年(1872)の大火を機に、明治政府により西欧風の煉瓦街に生まれ変わりました。設計したのは、イギリス人建築家トーマス・ジェームス・ウォートルス。
計画は、(1)道路幅の拡大を中心とする街路整備計画、(2)煉瓦を主材料とする不燃性洋風家屋の建築、の二本柱からなり、建築のために当時の政府予算の27分の1という巨額な支出が投じられました。
この結果、銀座通りの道路幅はそれまでの倍以上である、十五間(27メートル)に広げられ、車道と歩道に分離されました。
これが今の広く華やかな銀座通りの骨格になったわけです。
また、横浜と新橋をつなぐ、日本初の鉄道が出来たのも明治5年(1872)のことです。新橋ステーションの駅前商店街ともいえる銀座には、西欧からの輸入商店や新しい商品を扱う商人たちが次々店を開きました。洋食屋、パン屋、牛鍋屋、時計商、西洋家具店、洋服店などです。
こちらは、明治17年(1884)「京橋松田の景」井上安治の作品です。
明治15年(1882)6月より新橋・日本橋間に鉄道馬車が開通して、いち早く庶民の乗り物となりました。この作品では京橋を鉄道馬車が走り、その後ろには左右に大きな洋風建築の牛鍋屋の「松田」、その左に「玉寿司」の建物が描かれています。
さて、現在の銀座1丁目の様子を見てみましょう。
銀座通り入り口交差点の近くです。
先ほどの錦絵に描かれていた牛鍋屋の「松田」は、ちょうど写真中央の赤い看板の「銀座コージーコーナー」銀座一丁目本店付近にあったようです。
では、2丁目方向に歩いて行きましょう!
少し歩き進めますと、2丁目に「銀座発祥の地」記念碑を発見!!
「慶長十七(一六一二)年 徳川幕府、此の地に銀貨幣鋳造の銀座役所を設置す 当時、町名を新両替町と称せるも、通称を銀座町と呼称せられ、明治二年ついに銀座を町名とすることに公示さる」
銀座の名前の由来は、銀座役所から来ていたのですね~。
だんだん、イルミネーションもきれいになってきました。
ひときわ高い街灯を発見しました!
写真の中央にあるのが、「アーク灯記念灯」です。
明治15年(1882)、大倉財閥の設立者である、大倉喜八郎が日本で初めて電気街灯を銀座2丁目の大倉組商会前に建設しました。
こちらは、2016年、4度目の復元再建されたものです。
この時からすでに電気とガスの競争が始まっていたのですね。
さて、銀座二丁目から奥に入ると、銀座ガス灯通りがありますよ。
復刻のガス灯がいくつか建っています。是非、銀座通りに行った際には、見つけてみてくださいね。
そして、3丁目まで来ました。
アップルと銀座松屋のあたりです。近くは高級ブランドのお店が並んでいます。
では、明治の頃とくらべてみましょう!
こちらは、銀座三丁目を描いた作品です。
裸火のガス灯が店内を照らしています。
当時珍しい缶詰屋の店先風景。看板に「国産果物貯蔵製元 東京銀座三丁目 中川幸七」と書かれています。中川幸七は缶詰製造の開拓者の一人で、明治11年(1878)に果物類の缶詰、明治13年(1880)には松茸(柱に「松たけ罐詰」の看板)や牛肉の缶詰の販売を行っていました。
この錦絵は今見ると暗い印象を持たれるかもしれませんが、当時、ガス灯を商店に灯すことで、初めて夜に商売ができるようになったのです。
明治の人々にとっては輝ける光景として絵の題材になったのです。今でいうきらめくショーウインドウと同じ感覚ですね。
いよいよ銀座4丁目です。
銀座というとまず思い浮かべるのは、「銀座四丁目」交差点ではないでしょうか?
明治時代の四丁目はどんな様子だったのでしょうか?
現在の銀座4丁目交差点を描いた作品です。銀座煉瓦街の前の通りは車道と歩道に分けられ、その境には街路樹として松や桜の他、ガス街灯もありますね。作品の描かれた明治15年(1882)には、車道に鉄道馬車が布設開業しました。左端に描かれている建物は、現在の和光の場所で、「朝野新聞社」です。
それでは、今の四丁目の様子を見てみましょう!
和光の隣が木村屋、山野楽器、ミキモト、教文館と明治時代から創業しているお店ばかりが並んでいます。ちなみに現在の和光の時計塔は昭和7年(1932)に竣工した2代目だそうです。100年近く銀座の歴史を上から見下ろしていると思うと感慨深いです。
明治の銀座の特徴のひとつに、「新聞社の進出」があります。西洋の事物が集まるハイカラな街に、新しいものに敏感なジャーナリストたちが集まってきました。新橋ステーションは、地方への物流の基地でもありました。一時は銀座四丁目交差点のすべてが新聞社の時代もありました。新聞社に続いて雑誌社、関連する印刷所、広告会社などが進出し、銀座は一大情報発信地でもあったのです。
こちらが現在の和光の場所に建つ「朝野新聞社」が写っている写真です。
その後、和光の前身である「服部時計店」の創業者・服部金太郎氏が、朝野新聞社屋を買い取り、明治28年(1895)年1月、服部時計店は営業を開始しました。初代の時計塔は明治27年(1894)年に完成しました。
こちらが、初代の時計塔が写っている、明治の終わり頃の写真です。
左上に時計塔が見えますね。鉄道馬車の姿はなく、路面電車に変わっています。
今回は、京橋から始まり、「銀座1丁目」~「4丁目」の「銀座通り」をくらべてみました。
掲載した錦絵「銀座商店夜景」井上安治 と「銀座通煉瓦造鉄道馬車往復図」
歌川広重(三代)は、現在開催中の企画展「渋沢栄一とガス事業」(2022年1月16日まで)でもご覧いただけます。是非、お越しください!
歩行者天国も10月2日から再開し、少しずつ日常が戻ってきた感じの銀座の街でした。
みなさん銀ブラを楽しんでいました。ガス灯が初めて東京に灯ってから約150年、いまでは
ビルやショップ全体がライトアップされ輝いてます。
最後に1丁目から4丁目までの銀座通りのクリスマスディスプレイ・イルミネーションをご紹介し、クリスマス気分をお届けします。
今年のくらべる探検隊は、今回の第9回がラストです。
ガスミュージアムのスタッフは、いろいろな街に出かけてくらべる探検をレポートさせていただきましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?
来年もいろいろな街に出かけていく予定です。
どうぞよろしくお願いします。
くらべる探検隊1号T.Y
<参考文献>
・銀座公式ウェブサイト
・WAKO HP <和光と時計塔の歴史>
・銀座-駅前商店街 第一号-
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