ガスミュージアムブログ
東京の街 ~くらべる探検隊~ 第7回「九段坂」
暑い夏が過ぎ、残暑を経てようやく秋の涼しさを感じられる時期になってきましたね!
皆様お待たせ致しました!「東京の街 ~くらべる探検隊~」の第7回目は「九段坂」です。
秋と言えば「お月見」ですね!ちょうど今月10月は「十三夜」という日本古来のお月見があります。今年の十三夜は「10月18日」だそうです。
実は「九段坂」、月見の名所なのをご存知でしょうか。江戸時代に遡りますが、ここ九段坂はその名の通り九段の石段状でした。九段坂上は見晴らしが良く江戸湾や千葉の山々も一望できる素晴らしい眺望で、そのため月見の名所としても知られていたそうです。
江戸時代には、月明りやろうそくで暗い夜を過ごしていましたので、今と違い、人々にとって月は身近な存在であり、月見は季節の風物を楽しむための欠かせないイベントであったように思います。
それではさっそく!ちょうど九段坂付近、月が綺麗に描かれた錦絵がありましたので、ご紹介いたします。
「東京名所之内 九段阪之明月」葛西虎次郎 明治35年(1902)
この錦絵には、月明りと正面左に描かれている高燈籠の灯りが人々の暗い夜の暮らしを明るく照らし出す様子が描かれていますね。高くそびえ立つ「高燈籠」は品川沖を出入りする船の目印として灯台の役目も果たしていたそうです。
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【高燈籠(常燈明台)】
高燈籠(常燈明台)は、明治4年(1871)靖国神社(当時は招魂社)の燈籠として設置された。
方位版や風見が付けられ、いわゆる擬洋風建築の印象を醸した燈籠で、高さは16.8m。小林清親が描いた錦絵に、設置当初の高燈籠が登場している。(右絵)
九段下の上に設置されたため、品川沖を出入りする船の目印として、東京湾からも臨むことができ、灯台の役目も果たした。
かつて九段坂は急坂であり、いくつかの段が築かれていたが、関東大震災の帝都復興計画により勾配を緩やかにする改修工事が行われた。高燈籠は、当初は靖国通りをはさんで反対側に立てられていたが、この改修工事に伴い、大正14年(1925)に現在地に移転した。
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そんな月見の名所の九段坂ですが、明治2年(1861)に靖国神社の建立時に、石段は普通の坂に変えられたそうです。当時は、荷車の後押しをする商売まで流行ったそうです。九段坂の急勾配が目にうかびますね~!看板にもその様子が描かれています。(下記看板左下)
それでは、現在の九段坂の様子を見てみましょう!
高燈籠は、今もしっかりと靖国神社のすぐそばに残っていました!この高燈籠は、大正14年(1925)、関東大震災の帝都復興計画により、靖国通りの勾配を緩やかにする改修工事が行われたときに、昔の位置とは反対側に移設され、今は歩道橋の脇に残っています。
歩道橋から九段坂を見下ろしてみましょう!
現在は、交通量も多く高層ビルが立ち並んでいますが、昔は江戸湾や千葉の山々も一望できたそうです。
次に当館の企画展でもそれぞれ取り上げました「小林清親」「井上安治」の師弟の作品から、この九段坂の高燈籠を描いた錦絵をご紹介します。
【師匠:小林清親】は、下級武士の子として浅草に生まれ「光線画」と呼ばれる一連の作品で、江戸から明治へと時代の変化に翻弄される東京の姿を、夜の街に灯るガス燈の光や、陽光や月光などの自然光の微妙な印象や色の変化を描きました。晩年は肉筆画を多く手がけますが、大正4年(1915)に68歳の生涯を閉じました。
【弟子:井上安治】は、元治元年(1864)に浅草に生まれた井上安治、「光線画」の作品で人気を博していた小林清親へ15歳で入門し、翌年の明治13年(1880)には早くも作品を発表しました。師の作風を模倣しつつも自身の感性で捉えた東京風景を表現していましたが、明治22(1889)に26歳の若さで急逝し、その活躍も終わりを迎えました。
それではさっそく2枚の錦絵をご覧ください。
一番最初にご紹介した「葛西虎次郎」の月が描かれた作品とは違い、この2作品には月が描かれていません。より一層夜のとばりが深く感じられる絵ですね。
また、このふたつの作品は夕暮れ時の雨の風景として描かれています。傘を差している人が行き交い、高燈籠の明かりが当時の暗い夜の街を照らしている様子がわかります。
特に小林清親の作品では、高燈籠の光が路面に反射して、坂の風景を引き立たせていますね。雨で霞んでしまう夜の街の風景も光と影を効果的に用いて描かれる「光線画」の手法により、情緒的な作品に仕上がっています。
九段坂のこの高燈籠の近くには、とても有名な「靖国神社」がありますね!最後に少し靖国神社にもくらべる体験に行ってみましょう!
まず靖国神社の起源ですが、明治2年(1868)6月29日に建てられた「招魂社」に遡ります。明治天皇が国家の為に一命を捧げられた人々の霊を慰め、後世に伝えるため創建したのが始まりでした。
その後、明治12年(1872)6月4日に「靖国神社」と改称せれて、現在に至ります。明治天皇が命名された「靖国」という社号は、「国を靖んずる」という意味で、靖国神社には「祖国を平安にする」、「平和な国家を建設する」という願いが込められているそうです。
高燈籠の脇の歩道橋を上ると「靖国神社」の入口が見えます。
入口の第一鳥居をくぐると境内になります。
それにしても、とても大きくて立派な鳥居ですね!高さはなんと25mもあるそうです!25メートルプールと同じ長さと思うとその大きさがよく分かりますね!
この「第一鳥居」は「空をつくよな大鳥居(「九段の母」の歌詞より)」と歌い親しまれ、大正10年(1921)に日本一の大鳥居として誕生したそうです。
拝殿・本殿へは、この「第一鳥居(大鳥居)」から、「第二鳥居」、「神門」、「中門鳥居」と進み参拝します。
そのうちの1つ「神門」でくらべる探検です!
まずは、昔の「神門」から見ていきましょう。神門は昭和9年(1934)に建てられました。
「東京風景 靖国神社」ノエル・ヌエット 昭和11年(1936)
この作品は、ノエル・ヌエットの作品です。大正15年(1926)に初めて来日し、昭和37年(1962)にフランスへ帰国するまでの30年以上もの間、フランス語の教鞭をとるかたわら、戦前戦後の東京の街を歩いて多くのスケッチを残したそうです。
この作品は新緑が美しい5月頭ごろの季節でしょうか。初夏の日差しよけに青い着物の女性の手には、日傘があります。また、この錦絵からも分かるように中央2つの扉には菊花の御紋章が取り付けられています。
そして、これが現在の「神門」になります。
扉に取り付けられた菊花の御紋章の大きさは、直径1.5メートルもあるそうです。小学校高学年くらいの子供の身長と同じ大きさですね!
最後に埼玉県産の檜で出来た中門鳥居をくぐり、
拝殿に到着です。
拝殿は明治34年(1901)に建てられ、通常私たちがお参りに来るときはここで参拝します。現在はコロナウイルス感染症対策の為、また諸事情で参拝がかなわない方には、オンラインによる申し込みも行っているそうです。
最近はオンライン授業やオンラインツアーなどを始め、自宅にいても手軽に様々なサービスを受けられる便利な時代になりましたね~!
ここで靖国神社内のお子様向けのスポット情報を3つお届け致します!
【その① 神池庭園の鯉】
本殿の裏にある「神池庭池」には、たくさんの色鮮やかな鯉が泳いでいます。また、緑に囲まれとても静かで靖国神社の中にいても、深い山奥にいるかのような気分にさせてくれます。
鯉を眺めるだけでもお子様は喜びそうですね!ですが、更にここではなんと鯉の餌やりができます!
このように鯉の餌の自動販売機にて、100円で購入することができます。ぜひ、お子様と休憩がてら鯉の餌やりを楽しまれてはいかがでしょうか。
【その② 遊就館】
明治15年(1882)に開館し、10万点に及ぶ貴重な資料が展示されています。絵画や美術品、武具甲冑や武器類があるそうです。
遊就館の前には大きな広場と呼べるほどの空間があり、くらべる体験に訪れた際には、保育園児がたくさん走り回り、緑が多い空間で思い思いに遊びまわっていました。
また、遊就館の一階には大きな機関車や戦闘機が展示されており、お子様が興味を持つこと間違いなしです。
【その③ 外苑休憩所のピクチャーラテ】
外苑休憩所内にある「attic room YASUKUNI-GAIEN」というお店。
このお店ではピクチャーラテが楽しめます。更に、持ち込み写真によるオリジナルラテも注文できるみたいですよ!お子様の大好きなキャラクターで注文したら、完成をわくわく待ちながら楽しいランチを過ごせそうですね!
今月靖国神社では、「秋祭り」が執り行われるそうです。この秋祭りは春祭りに続き靖國神社で最も重要な祭典だそうです。
ぜひ、肌寒くなる前の心地よいこの時期に、友人やご家族で九段坂・靖国神社にくらべる探検に行ってみてくださいね!
今回のくらべる探検では紹介しきれなかった靖国神社境内の全47都道府県「さくら陶板」巡りもおススメです。
また、靖国神社の横には「北の丸公園」が広がります。
公園内は緑が多くベンチもあり、ピクニックができるような大きな広場もありました。ちょうど今の涼しくなってきた季節にはぴったりですね!
そして、公園内には「科学技術館」があります。昼食後にお子様と館内探検が出来ますね!
今回は九段坂・靖国神社の境内から「くらべる探検隊」をお送りいたしました。それでは皆様、また次回のくらべる体験でお会いしましょうー!
〈参考文献〉
・靖国神社 公式HP
・(株)中経出版 彩色絵はがき・古地図から眺める 東京今昔散歩 原島 広至
・当館企画展 配布資料
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