ガスミュージアムブログ
ガス灯を探しに行こう! 第4回 丸の内 三菱一号館のガス灯
シリーズ4回目は丸の内です。
丸の内といえば、高層ビルの立ち並ぶオフィス街をイメージする人も多いと思いますが、
その中にレトロなレンガ造りの建物が目を引く美しい一画があります。
それが今回ご紹介する三菱一号館です。東京駅から徒歩5分ほどにあります。
明治23年(1890年)に三菱財閥は丸の内界隈の広大な軍用地の払い下げを受け、
それを機に、丸の内を日本のオフィス街の礎として開発に着手します。目指したのは、
ロンドンのビジネス街。のちに「一丁倫敦」(いっちょうろんどん)とも呼ばれるように
なりますが、この三菱一号館は、その記念すべき最初のビルなのです。
明治の文明開化の象徴ともいえる鹿鳴館(明治16年、1883年竣工)を設計したイギリス人
建築家ジョサイア・コンドルにより、明治27年(1894年)に建てられました。建物は英国
ヴィクトリアン時代のクイーンアン様式。当初は銀行を含む複合オフィスビルとして使用
されていました。
ジョサイア・コンドルは工部大学校(現東京大学工学部)で教鞭をとり、日本の近代建築の
礎を築いた数々の日本人建築家を育てました。
その第一期生で、日本近代建築の父と称される辰野金吾は、日本の玄関口東京駅(大正3年、1914年竣工)の設計を手掛けたことで有名です。
丸の内の顔となっている三菱一号館と東京駅。赤レンガと白い石を巧みに用いた建築で、
恩師から教え子へとつながっているのですね。
高度成長期の都市開発の波をうけ、三菱一号館は、一度解体の憂き目を見ます。
しかし昭和63年(1988年)この街区が再開発にかかり、官民共同で、歴史的な景観を再現して
都市の景観の継承を目指すという趣旨のもと、平成21年(2009年)ついにこの三菱一号館は
明治の建設当初の姿に忠実に復元されることになります。
三菱一号館のガス灯については、古い写真から、明治期に浜離宮に立っていたガス灯と同型
であったことが判明します。東京ガスは、この計画に賛同し、特に脚柱部分の復元を、
ガスミュージアムが譲り受けて所蔵していた浜離宮のガス灯実物から型を取り、忠実に
再現し、提供することで協力しました。
復元されたガス灯は、一般の人にも開放されている中庭を囲むように10基あります。
では、ガス灯のデザインの細部に目を向けてみましょう。
ガス灯の頭部は、明治初期に主流だった銀座のガス灯などで用いられた「四角形」ではなく、
明治中頃に登場した「六角形」のものが採用されています。四角形に比べると、少しモダンな印象です。
頭部から視線を下へ落とすと、脚柱上部には地面に水平に伸びるカンザシと呼ばれるアームがあります。
カンザシはもともとガス灯のメンテ用の梯子をかけるためのものです。形状は丸い棒状。
アーム長手方向へ溝が彫られていて、脚柱の縦のラインと対比させた水平のラインに特徴があります。
脚柱部分は下にいくにしたがって太くなり、丸い装飾が幾重にもあり、
ギリシャ時代から柱の装飾に多用されている植物柄の「アカンサス文様」が施されています。
基部のデザイン
浜離宮のガス灯(ガスミュージアム所蔵)
復元された三菱一号館の建物は、現在、建物と同時代の19世紀末西洋美術を中心とした
コレクションを所蔵する「三菱一号館美術館」として利用されています。
せっかくここまで来たら、ミュージアム併設のカフェ「Café 1894」でちょっと贅沢に
ランチはいかがでしょうか?
明治時代には銀行のロビーとして使われていた店内は、
高い天井と、重厚なインテリアが特徴です。あのテレビドラマ半沢直樹のロケ地にも
使われていたんです。
「Café 1894」
中庭は、英国式のガーデンで四季折々の草花に鳥たちが集まってくる都会の
オアシスです。今は丁度ジョサイア・コンドルが愛したといわれる薔薇が満開です。
色とりどりの薔薇が咲き乱れ、人々はその甘い香りに誘われます。
休日には、オープンカフェやベンチでのんびり過ごす人たちが見られます。
灯がともった夜のガス灯は、また別な風情があります。
夜の中庭
「一丁倫敦」と呼ばれていた明治の時代に思いを馳せ、赤レンガの建物にはえるガス灯の
ロマンチックな空間に、しばし身を委ねてはいかがでしょうか。
担当:C.T
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